茨城県鹿嶋市にあるカフェ「foleclo(フォリクロ)」。 地元で愛されるこの店は、株式会社Plus Oneにとって単なる一店舗ではありません。代表の久保様が挫折を味わい、学び、そして現在の「スタッフ第一主義」という考え方へと至った、まさに株式会社Plus Oneという会社の原点でした。 学生ライターの鈴木がインタビューさせていただきました。
「一から店を作りたい」という想いから始まった、未経験の挑戦
鈴木:本日はよろしくお願いします。今回はPlus Oneさんの原点である「foleclo」について伺います。そもそも、なぜカフェだったのでしょうか?
久保氏:よろしくお願いします。実は、カフェなんてやったことなかったんですよ(笑)。当時は「一休(詳細は別記事)」を継いで数年経った頃で、「一から自分で店を立ち上げてみたい」という強い想いのようなものがありました。そんな時に親戚の税理士事務所が建つことになり、その1階で店をやらないかとお声がけいただいたのが始まりです。
鈴木:修業中だったため、一度はお断りされたんですよね。
久保氏:はい。でも震災の後にたまたま空きが出たと聞いて、「やります!」と即答しました。何をやるか悩んだ末、「カフェ飯」という言葉が流行り始めた頃だったので、「カフェならパスタも丼ものも何でもありじゃん」という、今思えばかなり安易な発想でカフェに決めました(笑)。
鈴木:未経験でのオープン、現場は相当混乱したのではないですか?
久保氏:前にその場所でやっていたお店のスタッフの方々を引き継がせてもらったんですが、僕が一番の新人みたいな状態でした。クーラーのスイッチすらどこか分からない状態でした。「僕がオーナーになったけれど、ここは僕の場所ではなくて、この子たちの場所に僕が来たんだな」と痛感しました。だからこそ、まずはスタッフの信頼を得るために、今日は誰にどんな話をしようかと、一人ひとりへの声掛けを緻密に計算して営業に入っていました。けっこう大変でしたよ(笑)。
「俺が原因だった」―― 廃業の危機が教えてくれた経営の本質
鈴木:オープン当初は順調だったのでしょうか。
久保氏:最初の3ヶ月こそ「ご祝儀」みたいな感じで売れましたが、半年後にはもう潰れそうでした。「一休」のやり方が全く通用しなかった。当時は「一休からお金を持ち出すことになったらこの店は辞めよう」と決めていたので、本当に後がありませんでした。
鈴木:そんな状況からどうやって立て直したのですか?
久保氏:知り合いの社長に誘われて行った勉強会が転機でした。そこで講師をしていた方が僕と同い年で、同い年の彼が100人以上の前ですばらしい講演をしている一方で、自分は店を潰しかけている。その情けなさと悔しさに打ちのめされました。「足りないのはお金じゃなく、自分自身の学びだったんだ」と気づかされたんです。
鈴木:経営者としての意識が根本から変わったんですね。
久保氏:そうですね。それまでは、お恥ずかしながら「売上至上主義」や「自分がお金持ちになりたい」という考えでした。でも勉強を重ねるうちに、経営の目的が「お金」から「スタッフが楽しく明るく働ける場所を作ること」に変わったんです。僕の商売の原点は一休ですが、会社の原点は間違いなくこのfolecloの苦労時代にあります。

「相手だったら」を考える
鈴木:その気づきから、教育に力を入れ始めたのですね。
久保氏:はい。当時は売上の5%、年間で200万〜300万円くらいを研修費に注ぎ込んでいました。「仕事を通じて人生を豊かにしてほしい」と伝え続け、知識が増えれば選べる人生の選択肢が増えるという話を何度もしました。「仕事」って、例えば出勤の時間や仕事のために早く寝るときなど、実際に仕事をしている以外の時間とかも合わせると、本当に人生の大半の時間を費やしていると思っています。そんな人生の大半の時間を豊かなものにしてほしいと考えています。
鈴木:その研修や教育の中で、久保様が最も大切に伝えてきたことは何ですか?
久保氏:結局、仕事も人間関係もすべては「自分が相手だったら、どう思うか」という一点に尽きると思うんです。例えば、料理が少し遅れたときに「遅くなってすみません」と一言添える。自分がお客様だったら、その一言があるだけで全然気持ちが違うじゃないですか。それを、スタッフに対しても、お客様に対しても、業者さんに対しても、徹底して想像することを伝え続けました。
鈴木:「相手の立場に立つ」というのは簡単そうで、実は一番難しいことですよね。
久保氏:そうなんです。「誰かのために」という気持ちだと、「誰々のためにやったのに」という考えになってしまいがちです。だからこそ「自分がどうするか」という独りよがりな基準ではなく、「その人だったらどう感じるか」を考え抜く。このマインドは徐々に組織内にも浸透してきています。
鈴木:その成果が、成果が、2021年の店舗移転・一時休業の際に現れたと伺いました。
久保氏:建物の契約満了で、一度店を閉めることになった時、コロナ禍も重なり、スタッフに「残るか辞めるか決めてほしい」と一人ずつ面談をしたところ、誰一人辞めなかったんです。正直、半分くらいは辞めてしまうだろうと覚悟していました。これは、「スタッフ第一主義」「スタッフが働きやすい環境づくり」をかかげてきた成果が少なからず出たのではないかと自信になりました。
今後の展望について
鈴木:現在の新しいフォリクロは、スタッフの方が自ら設計に携わったそうですね。
久保氏:2024年に再オープンする際、昔からいるスタッフ2人に任せました。壁の色、床の色、照明、メニュー開発まで。大手では経験できない「自分たちの店を作る」というチャレンジをさせてあげたかった。結果、僕だったら考えもしなかった素敵なソファや照明が並ぶ、素晴らしい店になりました。
鈴木:これからのfolecloは、どのような存在になっていくのでしょうか。
久保氏:ここを会社の中の「教育の最先端」にしたいと考えています。単に作業ができるだけでなく、「心が伴った仕事」ができる人を育てる場所です。folecloのサービスを経験すれば、どの店に行っても通用する。そんな高いマインドとスキルを持った人を輩出する教育機関にしたいですね。
鈴木:「ホールのサービスは料理をより美味しくも、まずくもできる」というお話も印象的でした。
久保氏:そうなんです。ホールの仕事は気軽にできちゃうけれど、一流を突き詰めるとすごく難しい。本当のプロフェッショナルとして、どこに出しても恥ずかしくないサービスを提供できる人をここで育て、Plus One全体の質を底上げしていきたいと思っています。
インタビューを終えて
当然ながら「組織」というものは「人」で構成されています。なので、組織のメンバーたちがどのように働くのか、活動するのかという部分が組織を運営するにあたって非常に重要になってきます。人の考え方や行動を変えることは非常に難しいですし、時間がかかります。とくに、自分の向いている方向に無理やり向かせようとすると、他人を変えることなど不可能に近いと思います。しかし、話を聞く限り代表の久保さんは、本当に「従業員の方々の人生」を思って、教育や研修を行っていました。それは思っているよりも難しいことだと思いますが、そういった部分を妥協せずに行っているからこそ、お店が久保さんの価値観に共感する方々であふれているのではないかと考えました。
また、インタビュー時には近くに従業員の方がいたのですが、「久保さんが教育や研修を通してよく言っていること」を尋ねた際に、すぐに答えていらっしゃったことが非常に印象に残っています。久保さんの考えや価値観がしっかりと浸透しているんだなぁと感じました。