前編では、栗山社長の会社や仕事への考え方、栗山工業株式会社という会社について、たくさんお聞きしました。後編では、栗山社長のパーソナリティも含めて、お話を聞いていきます。
ぜひ、前編の方も読んでみてください(前編記事のURL)
落ち着いていた幼少期と今でも続く本からの学び
鈴木:ここからは、栗山社長ご自身のパーソナリティについても深くお聞きしたいです。もともと生まれも育ちも美浦村だそうですが、昔から地域への愛着は強かったのですか?
栗山氏:いや、高校生くらいまでは美浦村はダサいなというか、「村かぁ...」みたいに思っていて、愛着なんて全然なかったですよ(笑)。でも、自分も50を過ぎたので、今は何かしら恩返ししていきたいなという思いはありますね。
鈴木:子どもの頃は、どんなお子さんだったんですか?
栗山氏:めちゃくちゃ内向的だったと思います。あまり人とコミュニケーションを取るのが得意じゃなくて、家の中でもずっと閉じこもっているような子どもでした。
鈴木:そうだったんですね。何かスポーツなどはされていましたか?
栗山氏:水泳はずっとやっていましたが、それは親にスイミングスクールに行かされていたからで、自分からやろうと思ったわけでもなく、今思うとそんなに楽しいものでもなかった(笑)。中学校まで水泳をやって、高校では水泳部がなかったのでハンドボール部に入りました。
鈴木:なぜハンドボールを選んだんですか?
栗山氏:サッカーほどメジャーじゃなくてちょっとマニアックで、競技人口の規模感がちょうどいいハンドボールが自分に合っていて、社会人でもクラブチームで続けました。あとは高校時代、バンドもやっていたんですよ。
鈴木:バンドですか!担当は何だったんですか?
栗山氏:ベースです。なぜベースかというと、単に空いていたからっていうのと、内向的な性格を引きずっていたのであんまり目立ちたくなかったから(笑)。ボーカルやギターじゃなくて、ベースだと適度な感じで目立たない。当時は極力目立たないように生きていましたね。
鈴木:なるべく空気のように目立たないように(笑)。その頃は本なども読まれていたんですか?
栗山氏:高校生の頃はちょっと卑屈になっていたので、太宰治みたいな、読むと落ち込むような小説ばかり好んで読んで、「こういう世界もあるんだな」と人の気持ちを知る勉強にしていました。
鈴木:休日は読書をすることも多いそうですが、今はどんな本を読んだり、勉強をしているんですか?
栗山氏:読書自体はずっと好きなんですが、卒業して社会人になってから、仕事の必要性に駆られて勉強し始めたんです。学生時代は勉強が大嫌いで「三角関数なんていつ使うんだよ」って真面目にやっていなかったんです。でも、今のICTやデジタルをやろうとすると、sin・cos・tanみたいな数学的知識って現場でめちゃくちゃ使うんですよね(笑)。
鈴木:まさか大人になって三角関数を使うとは(笑)。
栗山氏:「あ、勉強って役に立つんだな、ちゃんとやっておけば役に立つのに」と痛感して、そこから知識を補填するために本を読み漁るようになりました。経営理念を作ろうと思ったのも『ビジョナリー・カンパニー』の本を読んだのがきっかけですし、サイバーエージェントの藤田社長の本や、タリーズを日本に持ってきた松田公太さんの本を読んで、「新しいことにチャレンジしていく大切さ」を学び、自分もそういうことをやってみたいと思うようになりました。

個人の挑戦から業界の変革へ。小さな輪から紡ぐ「選ばれる会社」の未来
鈴木:「失われた30年」の停滞期をずっと見てきたからこそ、新しい時代を作りたいという想いがあるのだとか。
栗山氏:そうですね。バブルが崩壊して日本が停滞した時代を一緒に見て世の中に出てきたので、そういうものに反逆するというか、新しい時代を作りたいという思いは多分あったのかなと思います。
鈴木:業界全体の盛り上げや、セミナー活動についてはどういった想いがあるのですか?
栗山氏:私たちがこの業界に入職した頃は、私たちの世代(団塊ジュニア)的に仲間がたくさんいましたが、今の若い世代は人が減っていて、会社の中だけだと仲間を作るのが難しくなっている。だから、会社という狭い枠を飛び越えて、小さい輪からでいいから業界全体をつなげて、情報交換やこれからの建設業界のあり方を語り合える場を作りたいと思って、若い人を集めたセミナーや勉強会、飲み会をやっています。若い人と話すと新しい視点や考え方のトレンドが分かって、自分にとってもすごく広がりになっています。
鈴木:地域への貢献という点では、美浦村で活動もされていますよね。
栗山氏:毎月4日を中心に、月1回朝イチで会社周辺のゴミ拾い・清掃活動を定例で行っています。これは父親の時代から不定期でやっていたものを定例化したものです。父親の時代には、うちの会社のほかにグループ会社としてリサイクルで産業廃棄物処理を行う「株式会社美浦クリーン」ができたのですが、当時はスクラップ・アンド・ビルドが当たり前でリサイクルという概念が薄い時代だった。そんな早い時代に父親が新しい商売にチャレンジした姿を見ていたので、自分も新しいことにチャレンジしたいという思いがずっとあります。それが今のICTであり、もう一つのICTの会社も一緒にやっている理由です。
鈴木:お父様のチャレンジ精神を受け継いでいるんですね。子供向けのイベントなどもされているとか。
栗山氏:あとは、地域のイベントに工事車両や重機を持っていって、子どもたちに体験で乗ってもらう活動もしています。小さい子って重機が大好きなんですよ。でも成長するどこかのタイミングで興味がなくなって、業界に入る人が少なくなってしまう。だから「いかに子どもたちのワクワクを引き止め続けて、将来一緒に働けるか」は大きな課題ですね。
鈴木:建設業のイメージそのものを、変えていきたいのですね。
栗山氏:きつい、汚い、危険という「旧3K」のイメージがまだ根強いですが、実際はほとんどの会社が週休2日ですし、残業も少ない。ずっと現場で作業しなくてもいいようなスマートな働き方もできるようになってきている。ただ、それをまだ世の中に伝えきれていない。
鈴木:確かに、災害時などにも一番に動くのは建設業ですしね。
栗山氏:埼玉の道路陥没事故もありましたし、近年は大きな地震や台風などの災害が多い。そういうときに、建設業って「地域になくてはならない業者」だなと思うんです。だからこそ、変わってきている現状を伝えて、知ってもらえるように会社でYouTubeをやったり、個人のSNSで地道に発信したりしています。
鈴木:お子様が3人いらっしゃるそうですが、そんなお子様たちも含めて、将来的な事業承継についてはどのようにお考えですか?
栗山氏:10年後くらいを見据えたときに、グループ会社を含めて、バトンを渡す相手は社員の中からでも、第三者へのM&Aでも、子どもたちがやりたいと言ってくれれば子どもたちでも、誰でもいいと思っています。
鈴木:誰が引き継いでもいいと。
栗山氏: ただ、そう思ってもらうためには、会社が社会に必要とされていて、魅力的な会社になっていないといけない。社員が生き生きと働きやすくて、地域の人たちから「この会社ならここにあってもいい、必要だ」と思ってもらえるような魅力ある会社に体制を整えていくことが、今の私のテーマです。会社を急拡大させるつもりはないですが、現状維持は衰退を意味します。身の丈の中で、粛々と新しいデジタルや技術を取り入れながら前進していきたいですね。
鈴木:過去の古い慣習を塗り替え、地域の未来を真摯に見据える栗山社長の覚悟が深く伝わってきました。
栗山氏:あと最後になりますが、建設業も今本当に変わってきているので、栗山工業だけじゃなくて、これから仕事を探す皆さんの選択肢の一つに、ぜひ建設業も入れてもらえたらなと思います。
鈴木: 業界全体の変化がしっかりと伝わるメッセージ、ありがとうございます!本日はお時間をいただきありがとうございました。
インタビューを終えて
今回は、栗山工業株式会社の栗山社長にインタビューをさせていただきました。
今回のインタビューで最も印象に残っているのは、栗山社長の業界に対する想いでした。一企業での変革で終わってしまうのではなく、業界全体の未来を考えて、日々事業をされていたり、積極的に他社を巻き込んだセミナー等も開催しているといった部分に強い想いを感じました。実際に私自身も「建設業ってどういう業界なんだろう」というレベルでしか、建設業を知らず、記事内にもあった3Kのイメージが非常に強かったのですが、栗山社長のお話を聞いて、建設業界の変化や今後について理解を深めることができました。なかなか建設業界の人にお話を聞く機会も少なかったので、すごく貴重な機会になりました。
また、組織の話になったときに「分業化」という話題になりました。今まで、分業化のイメージは単純に「たくさんの業務を分解して、それぞれを社員に任せる」というものだったのですが、今回の栗山社長のお話を聞き、業務起点ではなく、社員の方が何が得意なのか、はたまた何が不得意なのかを起点に考えたり、そういった部分を分業化の念頭に置いているという点が非常に興味深いと思いました。
栗山社長は落ち着いており、寡黙な印象を受けますが、その中でも胸に秘めた熱い想いやそのお人柄を感じることができるインタビューでした。