海老根建設株式会社

【社長インタビュー】
100年の伝統と改革の歴史、地域と社員の幸せを最優先に掲げる海老根建設の真価

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投稿日: 2026.01.20

茨城県大子町という、美しい自然に囲まれた町で、大正5年の創業から100年以上にわたりインフラを支え続けてきた海老根建設株式会社。社長の柳瀬香織氏が行っている、業界の常識を鮮やかに塗り替える「働きやすさ」への挑戦や地域貢献に対する想いに迫りました。学生ライターの鈴木が、海老根建設株式会社社長の柳瀬氏にインタビューをさせていただきました。


地域の「当たり前」を支える”インフラドクター”の誇り


鈴木:本日はよろしくお願いいたします。まず伺いたいのが、海老根建設様が大子町という地域で果たされている役割についてです。ホームページなどを拝見しても、非常に地域への想いが強いと感じました。


柳瀬氏:私たちの拠点である大子町は非常に過疎化が進んでおり、田舎だからこそ車がないと生活が成り立ちません。道路が常に綺麗で安全であることは、住民の皆様が生活を送る上で必要不可欠な要素です。私たちは「地域ナンバーワンのインフラドクター」になろう、という志で事業に取り組んでいます。


鈴木:「インフラドクター」という言葉、とても素敵ですね。具体的にはどのような事業をされているのでしょうか?


柳瀬氏:メインは土木工事ですが、最大の特徴は「法面工事」を手がけている点です。これは山の斜面が崩れないように成形してコンクリートを吹き付ける専門技術で、茨城県内でも対応できる会社はわずか3社しかありません。


鈴木:県内でたったの3社!それは凄い強みですね。


柳瀬氏:さらに強みなのは、土木工事と法面工事の両方を自社で行えることです。他社さんだと法面工事専門ということが多いのですが、私たちは最初の「山を削る作業」から仕上げまで、一気通貫で対応できます。だからこそ、「海老根さんなら全部任せられる」と頼っていただける。その信頼が私たちの誇りです。


自社も被災しながら真っ先に地域へ。100年続く「共生」のDNA


鈴木:地域との繋がりという点では、2019年の台風被害の際のエピソードが非常に印象的でした。


柳瀬氏:2019年の台風では、私たちの本社も浸水する被害を受けました。電話もファックスも車も使えなくなるという絶望的な状況でしたが、私たちは真っ先に近隣の個人宅へ片付けのボランティアに向かいました。


鈴木:自社が被災している中で、なぜそこまで他者のために動けたのでしょうか?


柳瀬氏:周りはお年寄りの方々ばかりですから、自分たちで重いものを運んだり片付けたりすることは難しいと思います。自分たちを「地域の守り手」だと定義しているからこそ、有事の際に地域のために動くのは、海老根建設として当たり前の判断でした。100年続いてきたのは、地域の方々と共に生きてきたから。経営理念である「貢献・共生」が、理屈ではなく行動として社員の中に染み付いていると思います。


業界の常識を覆した月給制への転換


鈴木:制度面についても伺わせてください。建設業界、特に現場で働く技能者の方は「日給制」が一般的というイメージがありますが、海老根建設様は違うとお聞きしました。


柳瀬氏:はい。私たちは技能職も含めた全員を「完全月給制」にしています。これは6〜7年前に私が決断して切り替えたものです。


鈴木:業界の慣習を変えるのは大変だったのではないですか?切り替えた理由を教えてください。


柳瀬氏:日給制だと、雨で現場が休みになればその日の給料はゼロになります。梅雨の時期などは収入がガクンと減ってしまう 。それでは社員が安心して生活できませんし、若い人も入ってきません。 「週休二日制をやるなら、まず月給制にしないと休めない」と考えたんです。今では雨の日でも給料は変わりませんし、技能者であっても有給休暇をバンバン使って休める環境が整っています。


社員の「困りごと」を即座にルール化する、手厚い有給制度


鈴木:有給休暇についても、「子ども休暇」や「ウェルネス休暇」など、名前からして温かい制度がたくさんありますね。


柳瀬氏:これらはすべて、問題が起きてから「どう解決するか」を話し合ってルール化したものです。 例えば、以前男性社員から「子どもの送り迎えが必要だけど、ルールがないと上司に『また抜けるのか』と言われてしまう」という声がありました。そこで「時間単位の有給取得」を始め、さらにお子さん1人につき年5日間の有給を付与する「子ども休暇」を導入しました。


鈴木:社員の方々を第一に考え、意見を反映させた結果、このような多種多様な制度が出来上がったのですね。


柳瀬氏:ほかにも、ボランティア休暇やドナー休暇、多目的休暇などがあります。また、建設業にしては珍しいのですが、リモートワークも導入しています。他の地域で副業をやっていたり、体調を崩してから運転に不安があった社員などがリモートワークを活用しています。 「せっかく入った人に辞めてほしくない」という一心で、どうすればこの人が働き続けられるかを突き詰めた結果、今の形になりました。


スキルよりも「好奇心」。ミスマッチを防ぐための徹底した本音主義


鈴木:採用についても伺わせてください。これだけ手厚い制度を整えられている海老根建設様ですが、採用活動において柳瀬社長が最も大切にされているポイントは何でしょうか。


柳瀬氏:私は、「正直に伝えること」が何より大事だと思っています。採用の場ではどうしても会社を良く見せようとして「良いこと」ばかりを言いがちですが、入ってみて「思っていたのと違う」となってしまうのは、お互いにとって一番の不幸、ミスマッチですから。だからこそ、本当のことを本音で伝えるようにしています。


鈴木:飾らない本音での対話を重視されているのですね。具体的に、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか?


柳瀬氏:よく「コミュニケーション能力が必要だ」と言われますが、それは相手によって発揮できる場合もあれば、できない場合もありますよね。だから私は、能力よりも「好奇心」が旺盛な方に来ていただきたいと思っています。


鈴木:好奇心、ですか。


柳瀬氏:はい。「知らないことを知りたい」という力です。分からないことがあった時に、素直に先輩に聞けるかどうか。その好奇心の強さが、そのまま成長の速度に繋がると最近特に感じています。


鈴木:現場では、どのような個性が集まっているのでしょうか。


柳瀬氏:私たちの会社の、 事務や経理、人事を担当する建設ディレクター課のメンバーは、非常に細かなことに気づく几帳面な方が多いですね 。一方で、現場を仕切る技術者は、どちらかというと大雑把で豪快なタイプが多いです(笑)。


鈴木:対照的なタイプですね。


柳瀬氏:ですが、その「細かさ」と「大まかさ」が組み合わさることで、一方が抜けているところをもう一方が補完し合えるんです。その調和・バランスこそが、海老根建設という組織を強くしているのだと感じます。


鈴木:「人の不足」という業界全体の課題についてはどうお考えですか?


柳瀬氏:深刻な課題ですね。実際、人がいないために仕事を断らざるを得ないこともあり、非常にもったいないと感じています。会社としては、外国人人材の方に注目していて、現在は2名の技能実習生が活躍してくれていますが、彼らは3年で帰国してしまいます。一生懸命教えても3年でいなくなってしまうことは、教える側のモチベーション維持という面でも難しい部分がありました。


鈴木:だからこそ、新しい形での採用を模索されているのですね。


柳瀬氏:はい。今後は技能実習という枠組みだけでなく、より長期的に共に働ける外国人の方の雇用を積極的に進めていく方針です。人手不足という課題を解決するには、海外の方の力に頼ることは不可欠であり、会社としてその道を切り拓いていこうと考えています。


中小企業だからこそ、社外に「同期」を作る


鈴木:人材育成の面でも、非常にユニークな取り組みをされていますよね。特に「外の空気」に触れさせることを重視されているとか。


柳瀬氏:中小企業だとどうしても同期が少なくて、社内だけで育つと視野が狭くなってしまうのが心配なんです。だから新入社員には、1年間月に1回、必ず社外の同期の人たちと会う機会を作っています。


鈴木:あえて外に仲間を作らせるのですね。


柳瀬氏:技術だけ持っていればいいという時代ではありません。外の人と会い、自分の考えを伝えたりグループワークをしたりすることで、社会人としての「対話力」や「プレゼン能力」を磨いてほしいんです。 現場のトップに立つようなベテラン社員にも、あえてそのような研修の場へ行ってもらっています。「人と喋りたくない」なんて言いながら行ってますけどね(笑)。ただ、それが結果的に本人の、そして会社の成長に繋がると信じています。


インタビューを終えて


インタビューを通じて感じたのは、海老根建設という組織の「しなやかな強さ」です。「インフラドクター」としての確かな技術という伝統を守りながら、柳瀬社長は「社員が困っている」という事実に対して、驚くべきスピードで制度を取り入れ、組織を変化させ続けています。 この変化スピードこそが、海老根建設さんが長きにわたって事業を展開し続けられている理由なのかもしれません。

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